2019年1月5日、フジテレビ系列のテレビドラマ「さくらの親子丼2」の第5話が放送された。この回は島根県出雲市がロケ地となっている。撮影は2018年12月7日から12月9日にかけて行われた。当時、監督を務めていた最知由暁斗(さいち ゆきと)さんに話を聞いた。
最知さんは大阪府出身だが、祖母が鳥取県米子市出身で山陰とのゆかりが深い。子供の頃は祖母に連れられて、毎年のように米子を訪れている。出雲大社にも、祖母と一緒に何度か参拝に行っていた。
最知さんは、斎藤工さんが主演したTBSのドラマ「クロヒョウ」なども手掛けてきた。フジテレビ系列とWOWOWで放送されたドラマ「ギフテッド」でも監督を務めている。「ギフテッド」は、人気アイドルグループ「NEWS」のメンバー、増田貴久さんが主演を務めたドラマだ。
「さくらの親子丼2」第5話は正月に放送するため、何か特別感を出したいということでロケ地が出雲に決まった。宮崎県、北海道など他にも候補地がある中で、出雲が選ばれた。
通常、テレビドラマは事前に「ロケハン(撮影地の下見)」をやってから、前もって映像の切り替えなどの計画を立てる。そのうえで撮影に臨む。「さくらの親子丼2」の第5話では、その時間が無かった。撮影開始日である12月7日の3日前に、カメラマンと制作部スタッフを連れて「ロケハン」に訪れた。東京に帰って構想を練る間もなく、そのまま撮影に突入する。どの場所をどのシーンで使うかなど、現地に行ってみて、その場で決めた。
冬の山陰地方は天気が変わりやすい。撮影の日程が決まっているため、雨や雪が降っても延期したり中止したりすることはできない。直前のシーンは晴れていたのに、次のシーンが突然、雪が舞う中での撮影になることもあった。砂浜での撮影では、風が強すぎて目を開けることができないほどだ。舞い上がる砂でカメラが壊れる寸前だ。最知さんは「結果的にそういったことが効果的だった」と回想する。
島根フィルムコミッションのスタッフ、原みさこさんは「さくらの親子丼2」の撮影支援を行っていた。原さんは当時のことを次のように振り返る。
「最知監督はスタッフや役者の方々をはじめ、地域の方々にも分け隔てなくお声をかけておられました。撮影チーム全体がとても良い雰囲気で、監督のお人柄や魅力があふれている現場だなと感じました」
最知さんは今年10月、動画配信サイト「YouTube」で「ゆきパパの1人旅」という個人チャンネルを開設した。ドラマ制作で身につけた技術を活かして、構成から撮影、編集まで自ら行う。
最知さんによると、現在の職業は「旅人」なのだという。年内はテレビドラマの仕事を調整し、YouTube動画の制作に励む。開設から1か月も経たないうちに「韓国編」など海外ロケの動画が公開されている。11月からは台湾・ベトナム・カンボジア・ラオス・タイへ撮影に行く。今後はテレビドラマの仕事と「旅人」を半々でやっていく予定だ。
2025年の夏ごろには「ゆきパパの1人旅」の制作で山陰を訪れることも計画している。米子市は祖母の故郷だ。仕事で立ち寄ったことはあるものの、個人的に行くのは約40年ぶりとなる。「想い出をたどりながら、祖母への想いを馳せる旅になる」と語る最知さん。
山陰の郷土料理にも興味がある。「いなり寿司の具沢山みたいなやつとか、乾燥ワカメのおにぎりとか、祖母はよく作っていました」と懐かしそうだ。
「いなり寿司の具沢山みたいなやつ」とは、鳥取県西部の郷土料理「いただき」のことと思われる。
「さくらの親子丼2」の撮影時、出雲で食べた「のどぐろ」や「カニ」の味も忘れられない。出雲では「さくらの親子丼」の聖地巡礼をしたいと考えている。
祖母の故郷「米子」と、思い出の地「出雲」が「ゆきパパの1人旅」で取り上げられる日が楽しみだ。
(この記事に掲載された写真は、すべて最知由暁斗さんご本人の承諾を得て使用しています。)