◆旅に出る理由
山陰で演奏活動を続けて15年経ちます。
作曲家で編曲家の溝渕新一郎先生に制作していただいた曲が、現在制作中の新曲と合わせて10曲になる今年、演奏ツアーをやろうと決めました。
4月下旬、渋谷で溝渕先生と待ち合わせしました。
先生とのミーティングではいつも、美味しい料理店の話題が出ます。
「あそこの店は安いのにめちゃくちゃ美味かった!」とか、「老舗はただそこにずっと在るわけじゃない。必要な変化や進化を遂げながら、伝統を守り抜いて生き残っているから凄いんだ」などの話が続きます。まるで音楽のことを話されているように聞こえ、背筋を正される思いになりました。
今回計画している演奏ツアーは、最初から最後まで私一人です。
打ち込み(機械の音)で作った伴奏に合わせて演奏しますが、曲の印象が伴奏の品質に左右されることがあります。聴いているうちに飽きてしまうなど、誰に相談しても結局は生演奏の音にはかなわないという結論に至ります。それでも次へ繋げるための発見や成長を得るための、実験的な試みも含めて挑戦しようと思います。
去年の秋、気になるお店を訪ねた時には自分を売り込むことが難しく、伴奏を流すスタイルが受け入れられませんでした。「表現したいこと(自分の曲)がないでしょ?それなら無理にやらなくてもいいんじゃない?」と言われたお店もあります。
溝渕先生とは、昼過ぎに解散しました。
歩いて南青山へ向かい、原宿で買い物をしてから宿泊先のホテルに到着です。
早速、近くのライブスポットを検索し、直感を信じて訪ねてみることにしました。
オーナー、ホールスタッフともに、私より若い人が働いているお店です。演奏先を探していることを話すと「ぜひうちで演奏してください!」と言ってくれました。
このように、探していけばジャンルや演奏スタイルは気にしないというお店もあるということがわかり、励みになります。
これまでどこで活動していても、続けていればいつか然るべき人から声がかかり導かれるものと思っていました。しかし山陰で色々な経験をさせてもらって、これからは自分の力で道を切り拓くことが必要だと感じるようになっています。
今、このような連載を書かせていただくことも、未来を切り拓くための挑戦です。慣れない作業は他にも沢山ありますが、演奏ツアーを実現するために動いていると、日々はあっという間に過ぎていきます。この準備期間の様々な学びは、次へと進む道しるべになります。
演奏の旅に出かけて、私のサックスを好きになってくれる人を見つけ、演奏させていただけるお店とのご縁を育みたいと思います。 それが、私のめざすところです。そして旅に出る理由でもあります。
【宮本美香】
○ 宮本美香 ○
島根県松江市在住のサックス奏者。学校教員を経て2009年から演奏家として活動を開始。販路開拓を支援する補助金「小規模事業者持続化補助金」を商工会議所へ申請。2023年11月に採択される。採択された事業「宮本美香 ソロ演奏ツアー」を行うため奮闘中。
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