【連載】 サックス奏者 販路開拓の旅(3) あなたに逢いに行く 

広島のライブハウス「ふらんす座」で事前稽古をする宮本美香さん

◆あなたに逢いに行く

山陰で私の活動を応援してくれた方が、転勤や退職を機に故郷に戻られた後で、再び私の演奏会に来てくれることがあります。

これまでのご縁もたどりながら、最初の「演奏ツアー」開催地は東京と広島にしました。

宣伝用のチラシを作るために写真を選び、演奏会の題名を考えてからプロフィールを整えます。デザイナーさんとのやり取りを通じて、自分のやりたいことや伝えたいことが明確になっていきました。

6月上旬、新作「GeGeGe no KITARO(ゲゲゲのきたろう)」が完成しました。編曲は溝渕新一郎さんが行っています。いずみたくさんが作曲した原曲「ゲゲゲの鬼太郎」の旋律が細やかに散りばめられていて、自由で大胆に編曲されています。

6月下旬、ご挨拶と下見を兼ねて東京と広島へ事前稽古に行きました。

初日の会場は、水道橋の近くにある「東京倶楽部」です。東京ドームがあり、人がたくさん歩いている落ち着いた印象の街でした。会場の店には少し早めに着きました。外に漏れてくる歌声とピアノの音を聞くと、ここから私の新たな活動が始まっていくという実感が湧きます。

中に入ると若い男性スタッフさんがいて、すぐに打ち解けました。彼自身もサックスを演奏する活動をしています。

まずは、バッキングトラック(サックスの伴奏として流す音)の音質を調整する方法を覚えます。お店が設定している音量でも充分に満足のいく音で演奏することができると分かって、安心しました。

宮本美香さんが演奏をする「東京倶楽部」
宮本美香さんが演奏をする「東京倶楽部」

事前稽古を終え、チラシを置かせて頂く予定にしている、御茶ノ水の楽器店へうかがいました。スタッフさんに「せっかく来たんだから、うちだけじゃなくて、この辺の楽器屋さん全部に持ってかないと!」と言われます。一段と勇気が湧きました。

夕日が沈む頃には、飛行機で広島へ移動です。

翌日、チラシを置かせてもらう楽器店へご挨拶にうかがいました。同世代のスタッフさんから、広島の音楽家がどのように活動をしているかなども聞くことができて、刺激を受けます。

そして路面電車に乗って、十日市町のライブハウス「ふらんす座」へ向かいました。

到着して扉を開けると、同世代の女性スタッフさんが待っています。機材の操作中に小さな出来事がありました。おかげで一気に親しくなれたような気がします。小ぶりな会場ですが、実力を試されているかのように感じてしまう不思議な空間でした。

事前稽古の後に休憩していると、音楽喫茶「ヲルガン座」のカウンターで私のチラシを発見しました。様々な土地で演奏する未来を願い続けていたので、万感胸に迫ります。

「ヲルガン座」のカウンターで見つけた「宮本美香演奏ツアー」のチラシ

島根へ戻るバスの中、疲れた身体とは裏腹に心は元気でした。それは人に会いに行って、私のためにかけてもらった言葉に勇気づけられたからだと思います。言葉は本に書いてあります。交流サイト(SNS)や動画でも見つけられます。しかし私の目を見て発せられた言葉は、私だけに向けられています。聞く意味があるし、信じるに値します。

いい言葉ばかりではないかもしれません。全てを真摯に受け止めて、サックス奏者として研鑽したいと思います。そして私の音楽を、聴いてもらうチャンスが欲しいです。

だから私は、あなたに「逢い」に行きます。

この連載を読んでくださっている方にも、どこかでお会いできたらうれしく思います。

いよいよ「演奏ツアー」の初回公演が迫ってきました。7月20日、東京都内水道橋の「東京倶楽部」で演奏を行います。翌日の7月21日は広島市に移動して「ふらんす座」で演奏します。
【宮本美香】

○ 宮本美香 ○
島根県松江市在住のサックス奏者。学校教員を経て2009年から演奏家として活動を開始。販路開拓を支援する補助金「小規模事業者持続化補助金」を商工会議所へ申請。2023年11月に採択される。採択された事業「宮本美香 ソロ演奏ツアー」を行うため奮闘中。

宮本美香さんが東京から広島へ移動する飛行機の中で見た景色

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