
(前編よりつづく)
屋内壮馬(やうち・そうま)さんは、アスリートの通訳をする日本人を「かっこいい」と思った。高校生のとき、英語が得意ではなかった。野球をやっていたが上手ではなく、ほかにとりえもなかった。日本の大学に入ってから英語を勉強してみたところ、少しずつ理解できていることに気づき楽しくなった。
留学を決意して、希望に満ちあふれてフィリピンのベンゲット州立大学へ向かった。自信満々でフィリピンに入ったが、屋内さんの英語は、まったく通じなかった。
なんのとりえもなかった自分に「英語」という希望が見えてきた矢先だ。
絶対に英語をマスターする。
屋内さんが自分に課したのは、ひたすら英語を話し続けることだった。
(英会話に自信はないが、毎日現地の人と会って自分から話しかけよう)
屋内さんはフィリピンの学生に積極的に話しかけた。使える表現を全部使って、身ぶり手ぶりで話しながら実践の中で英語を覚えていった。

日本語を話してしまうと英語の上達が遅れる。英語力を向上させるために、日本人と会うことは、ほとんどしない。留学に来ている日本人がほかにもいたが、互いに英語で話すことを約束した。
フィリピンの人は話すのが好きだ。大らかな人が多い。ジョークも頻繁に飛び交う。友達は、やさしくて熱心に教えてくれる。英語を勉強したいと言ったら、いつでも会話の相手をしてくれる。
フィリピンでは英語は第二言語だ。第二言語として、教わって英語を身につけた人たちが多いので、教えるのがうまい。感覚で教えるのではなく、論理的に説明してくれるので日本人にとっては分かりやすい。
屋内さんは母国語の日本語を感覚で身につけてきた。日本語の発音や文法を論理的に説明できない。フィリピンの人が論理的に英語を説明できることに感心する。
屋内さんが日本で覚えた英語は、イギリスやアメリカ、オーストラリアなど、いくつかの国のアクセントが混在している。
フィリピンはアメリカ英語の影響が強い。イギリスのアクセントで話すと、フィリピンの人には理解してもらえないことがある。友達に言われて、はじめてイギリスのアクセントだったのだと気づく。相手が理解できなかったら、スペルを伝えることで理解してもらう。
ベンゲット州立大学には日本語を教えるクラスがある。屋内さんは、インターン生として毎週水曜日に教授のアシスタントをつとめる。フィリピンの学生に、英語で日本の文化や観光名所を教えているのだ。
インターンシップには大学オフィスでの手伝いもある。フィリピンではオフィスの書類は、ほとんど英語で書かれている。生活のすべてが英語のトレーニングになっている。

サッカーの元日本代表、本田圭佑さんの動画配信サイトを見ることがある。本田さんは流ちょうに英語を話している。第一線を退いたサッカー選手が、英語でコミュニケーションを取ろうとしていることが刺激的だった。
本田さんは、発展途上国の子どもたちの支援も行う。英語に挫折しそうになると、本田さんの動画が励みになった。
将来は日本から海外に行く人を応援したい。アスリートに限らず、ビジネスで通訳が必要な人をサポートしたい。
国際交流を職業にしたい。発展途上国の子供たちの支援もできたらいいと思う。国際協力機構(JICA/ジャイカ)や青年海外協力隊にも興味がある。
英語をいかして、やりたいことは尽きない。屋内さんは英語への想いを語る。
「挫折したり英語の勉強をしんどいと感じたりすることはありますが、通じた時の楽しさは、つらさに勝ります。英語を勉強したり、話したりすることが楽しいです」
高校生のとき、英語が得意ではなかった。野球も上手ではなかった。秀でた何かを持っていたわけではない。屋内さんは、大好きになった英語で未来を切り開く。
屋内さんの未来は「かっこいい」

(前編)はこちらです。
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