外国人向け旅行商品の販売を仲介するプラットフォーム「Though INAKA」のホームページが本日3月1日、インターネット上で公開された。島根県発の観光を扱うプラットフォームだ。
日本の風情や歴史を体感できる「イナカ」旅行は、都会にはない魅力で日本に深い関心がある層を中心に人気が高まった。特に近年は、環境への配慮や地域の伝統を大切にする「サステイナブルツーリズム」(持続可能な観光)という考え方が広まり、欧米豪の意識が高い層を中心に人気を集めている。
「Though INAKA」はこうした需要に着目し、大手旅行代理店経由ではたどり着けないようなニッチでありながら魅力あふれる地域や体験と、それらを提供できる可能性を秘めた人々をつなぐ新しいプラットフォームだ。
「Though」とは英語で「けれども」という意味であり、「田舎」にはマイナスなイメージがあるけれども来てみれば魅力があふれているという想いを込めるとともに、発音すると「ド」に近い音になることから、「ド田舎」との掛詞になっている。
特に力を入れるのが、単なるツアーガイドとは異なり地域の魅力とその物語を深く紹介することのできる「語り手」(ストーリーテラー)による「プレミアムツアー」だ。
現時点では三つのツアーを用意しており、それぞれ松江城や出雲大社など有名観光地を出発点とし、県内の奥出雲町や雲南市でたたら製鉄やお茶文化などの歴史を学ぶ日程となっている。
いずれのツアーも一貫したテーマとストーリーを持っていることが特徴だ。
「Though INAKA」では単に外国人に旅行商品を紹介するだけでなく、「語り手」や体験の提供者たりえる地元の人々からの相談も受け付ける。魅力ある伝統文化に精通し、それを外国人に紹介することに関心があるもののノウハウがないという人を発掘し、ともに形にすること目指すのも目的の一つだ。
このサイトを立ち上げたのは奥出雲町在住のサミーラ・グナワラデナさんと福間芳行さん。サミーラさんはスリランカ出身で、2001年に日本に留学。06年から島根県海士町の観光協会に勤め、その後、妻の実家の奥出雲町で観光に関わり続けている。自治体の枠を超えた観光誘致を実践しようと21年に株式会社「タビカラ」を立ち上げた。
会社立ち上げ当初から、「地域のことをよく知る人とともに旅行商品を作り、それを載せるプラットフォームを作る」こと目的として準備を進め、実際にどんな旅行に需要があるか、外国人観光客へのモニター調査などを行ってきた。
今回の「Though INAKA」公開は、「タビカラ」とサミーラさんにとって大きな一歩だ。
旅行会社でも働いたことのあるサミーラさんは、時間的制約から多くのツアー旅行は、東京で表面的な「お茶」や「サムライ」を見せて終わってしまうと嘆く。
それでは日本の持つ本当の価値が下がってしまうし、日本に関心を持ってやってくる観光客にとっても、もったいない。
東京にしかない現代的な魅力がある一方で、地域独特の文化など「日本の本質」は島根などの田舎にこそあり、都会と地方の両方を見てこそ「日本」なのだ。そんな熱い想いがサミーラさんを突き動かす。
まだまだ試みは始まったばかり。実際にどんな需要があるか。どんな語り手がいるか。このプラットフォームを介して新しい出会いと発見があることを期待している。