
〈設備よりもマインド〉
アメリカの練習は平日の5日間です。週末は練習をしません。私は違和感を持ちました。日本では毎日練習をしていて、年中無休だったからです。それに週末は授業がないため、試合に出場するような感覚で練習できる貴重な日だったのです。
アメリカの大学に入ったばかりのころは、どれだけ練習しても少ないように感じました。日本にいた時とは練習量がまったく違うためです。アメリカに来て、量より質の練習方法も学べたことは確かです。でも練習が足りないと思い、学校に行く前や週末に1人で自主練習をしていました。
アメリカの練習では、「素晴らしい!」「今のとても良い」などと褒められる場面が多いです。褒められることに慣れていないため、私は違和感を覚えます。
日本では、自分でうまくできたと思っても「まだダメ」「できてない」などと先生に言われ続けていました。少しでもうまくいけば、すぐ褒められることに疑問を感じました。
「んー、これって本当にいいのかな?」「それとも、ただそう言っているだけ?」などと、逆に疑ってしまいます。

いつも表情や感情の出し方に困っていました。日本では感情をあまり見せないようにしていたからです。戸惑った時、何も感情を出さなかったら、アメリカでは冷たい人間だと思われるそうです。
私は、甘やかされたくありません。コーチに「おー、それ良かった」と言われても、自分の頭の中では違うことを思います。
「そうかな?日本で教わった先生だったら、なんておっしゃるだろう?」などと考えていました。
練習設備はアメリカの大学のほうが立派です。
日本で練習していた時は、100メートルしかない短距離走用の練習場を、他の種目と共同で使っていました。アメリカの大学では400メートルトラックの中に棒高跳び専用の練習場所が確保されています。
また、日本の高校では天気に左右される練習をしてきました。天気が悪かったら屋内で腹筋を鍛えたり、ウェイトトレーニングをしたりします。屋内にあるレスリング練習場の半分を借りて、マット運動やロープを使った練習もしていました。
アメリカの大学では、雨の日に練習する設備も整っています。屋内の200mトラックがあります。人工芝の屋内フットボール場なども使うことができます。


(雨の日はここでトレーニングを行う)
日本の高校とアメリカの大学では、器具も違います。高校の時に使っていたのは、長年使ってきた古いバーベルでした。市に譲っていただいた、古い棒高跳びのマットもありました。アメリカでは定期的に新しい器具に買い換えます。アスリート専用のウェイトトレーニング場もあります。
でも、高校の時は設備の質に関係なく、あるものに感謝して練習に励んでいたことを思い出しました。
どれだけ、お金をかけて設備が整っていても、練習をする人たち自身が一生懸命でなければ上達しないと思います。高価な器具や立派な施設がなくても、素晴らしい先生や努力のおかげで選手たちは上達していくのだと感じます。
【棒高跳び選手 坂口ジャスミン紫苑】
○ 坂口ジャスミン紫苑 ○
鳥取県出身の棒高跳び選手。2021年6月の中国高校総体では大会新記録で優勝。2022年に出場した「日本選手権U20」では、自己ベストの記録で4位に入賞している。倉吉北高校卒業後はアメリカ・カンザス州にある短期大学「クラウド・カウンティ・コミュニティ・カレッジ」に進学。短大の全米大会で優勝し、ルイジアナ大学ラファイエット校にスカウトされて編入。現在(2025年)、アメリカで日本代表をめざす。ニュージーランド生まれ。
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