
2025年3月10日、鳥取県大山町出身の橋井梨花(はしい りか)さんが東京都内に株式会社amour(アモア)を設立した。花の大規模装飾やコーディネートを手掛ける。生花や植物の注文販売も行う。
橋井さんは鳥取県内の高校を卒業後、東京都内の服飾専門学校に進学した。ファッションの仕事に就きたいと考えたからだ。好きなアーティストの衣装管理をするのが夢だった。卒業して間もなく夢はかなう。ダンス&ボーカルグループ「E-girls(イーガールズ)」のツアーで衣装管理を務めた。
夢をかなえた橋井さんは、新たな道へ進む。花を扱う仕事だった。小さいころから、見た目が綺麗なものが好きだった。洋服も花柄を選ぶ子供で、花が好きなことを自覚していた。
学生時代に、花と洋服を組み合わせたファッションショーを行ったことがある。洋服の仕事に就いた後も、花のアクセサリーを担当した。「花は、いいな」と、いつも思っていた。
花について深く学ぼうと考えた橋井さんは、大手のフラワーショップでアルバイトを始める。
飾る人の力で、色や形が変わっていく生き物があることに興味をひかれた。これほど美しいものはないと思った。

知識が深まるにつれて、どんな花を扱いたいのか考えるようになった。洗練されて、落ち着いた花にたどり着く。
イメージに近いフラワーショップに転職して、結婚式の花装飾や植栽、仕入れの方法を学んだ。やがて、自分でブランドを持ってみたいと考えるようになった。
2020年3月、まずは個人事業として開業する。開業してすぐにコロナ禍が始まった。消費者の在宅時間が増えたためオンライン販売の業態には、それほど影響はなかった。
しかし橋井さんがめざしていた、結婚式やイベントの花装飾を行う業態は打撃を受けた。最初のうちは知り合いからの注文のみだった。
そのうち、大手フラワーショップの装飾チームと提携して、結婚式の花装飾を担当するようになる。ホテルや結婚式場の依頼も増えてきた。自分が装飾した花の写真をSNSに公開すると、広告代理店からも注文が来るようになった。
最初の2年間は苦しかったが、顧客が新たな人をつないでくれた。2023年から2024年にかけて売上が上昇し、2025年3月に法人を設立することとなった。
「amour(アモア)」には、フランス語で「愛情」という意味がある。ふるさと鳥取の県花は「二十世紀梨の花」だ。橋井さんの名前も「梨花」。
梨の花言葉を調べたら「愛情」だった。起業を志した当時から「愛」をテーマとして活動してきたため、ふさわしいと考え「amour」を社名とした。
最近は宝石ブランドや、全国展開のリゾートホテルからも注文を受ける。ミュージシャンの動画で、花装飾を手掛ける。


橋井さんは言う。
「花は命あるもの、特別なもの」
花により人に感動を与えたい。花を人生が変わるきっかけとしてもらいたい。
最近ホームページをリニューアルした。7月からは新たなスタッフも増やし、体制を強化する。東京から鳥取への販路開拓も本格的に始める。
花は毎日のように新しい品種が生まれ、値段も変わる。花の美しさは人の「感覚」で決まるため、正解や不正解がない。感覚によって美しさが決まるものが、ほかには無いのではないかと橋井さんは考える。
夢は、NHK紅白歌合戦の花装飾をする会社に成長させることだ。そのために何ができるか、日々考えながら仕事をしている。





