自然の中で保育を行う「森のようちえん」として2014年に鳥取市でスタートした「風りんりん」が今日、4月1日に10周年を迎えた。代表の徳本敦子さんは「育てるではなく、育つ力を見守る」という考えに重点を置き、子供の自主性を最大限に尊重する子育てが大人も子供も幸せにすると語る。
森のようちえんは1950年代にデンマークで始まったとされ、日本では1980年ごろから広まり、現在では全国に約300団体あるという。0歳からの未就学児を対象に、森や海、川など地域の自然環境での活動を中心に保育活動を実践するのが特徴だ。
風りんりんでは市内の森や里山などで日中の大半を過ごし、時には子供だけでの自炊活動を実施するなど、子供が自ら生きる力を身につけることに主眼を置いている。
風りんりんは2014年、県のモデル事業の対象となり翌年から創設された「とっとり森・里山等自然保育認証制度」で認定され、補助金を受給して運営されている。
徳本さんによれば森のようちえんへの補助金制度は、当時すでに県内で森のようちえんを運営していた別の団体の積極的な働きかけにより全国で初めて実現したという。
利用料に応じて一定割合を県が負担する仕組みで、鳥取市など市や町がさらに一部を負担する自治体もある。
一方で、一般的な「幼稚園」である認可園との補助率には差があり、利用料に差が出やすいのが実情だ。一般的な幼稚園の必要職員数は子供1人に対して30人だが、野外活動が中心の森のようちえんは子供6人に対して職員1人と定められているなど、運営にかかる費用も高い。
徳本さんは県や市の補助金に対し「非常に助かっている」としつつ、「森のようちえんに入れたいと思っても、利用料が高いから選ばないという保護者もいるのではないか」と危惧する。長年にわたり認可園並みの補助を求めて県に働きかけているが、改善は数十円ほどにとどまっているという。
そんな徳本さんの夢は「すべての幼稚園が森のようちえんのようになること」だ。
それは単に形式的なことではなく、「見守り保育」という考え方の浸透を指している。
「子供には子供の世界があり、自分たちでルールをつくり、コミュニケーションをとりながら社会生活を学んでいく。大人がすべきことは子供がやりたいことを実現できる環境を用意することと、安全に活動できるよう見守るだけ」。
それにより自分で考える力のある子が育ち、大人も「しっかりしつけなくてはいけない」「他の子と比べてうちの子は遅れている」といったプレッシャーから解放され、互いにとって幸せな子育てになるという確信が徳本さんにはある。そこには10年間見守り保育を貫くことで経験してきた強い実感が込められていた。
(注:取材日時点で「森のようちえん 風りんりん」のホームページには「2015年4月開園」との記載があります。開園は「2014年4月1日」で間違いないと、徳本敦子さんに確認の上で記事を作成しています。)