「日本一美しい廃線跡」ともいわれる鳥取県倉吉市の旧国鉄倉吉線の廃線跡で、3月1日から訪問の記念として「廃線印」が販売されている。神社や寺の「御朱印」をイメージした1枚紙で、第一弾として200枚用意したうちの20枚ほどは最初の3日間で売れたという。人気スポットの新たな定番土産となりそうだ。
倉吉線は倉吉駅から東伯郡関金町(現・倉吉市関金町)の山守駅までを結ぶ路線だったが、1985年(昭和60年)に全線が廃止となった。現在では県有地だが、市が借りる形で活用に取り組んでいる。
廃線跡のうち一部がウォーキングできるよう整備されており、2キロメートルほどの距離で幻想的な竹林や日本の原風景ともいえる田園風景、探検気分を味わえるトンネルなど多彩な景色を楽しめる。
特に線路の中心に立派な竹がそびえる光景がSNSなどで話題となり、「インスタ映え」するとして若い世代を中心に人気に火が付いた。スマートフォンのGPS情報に基づく市の調査によれば、少なくとも年間1万2000人以上が訪れているという。
「廃線印」は廃線跡の活性化にかかわる団体が互いに協力しようと立ち上げた「日本ロストライン協議会」が推進するプロジェクト。協議会は岐阜県飛騨市神岡町で神岡鉄道の廃線跡活用に取り組むNPO法人「神岡・町づくりネットワーク」が呼びかけ、北海道から宮崎県まで全国15団体が集まって設立した。倉吉線の活用に携わる一般社団法人「倉吉観光MICE協会」も当初から参加する団体の一つだ。
コロナ禍で活動が制限される時期もあったものの、全国ネットワークを生かした活動として「廃線印」の普及に取り組んでおり、倉吉市と飛騨市以外では現在、北海道小樽市と宮城県栗原市、愛知県春日井市の三か所で販売している(期間限定地域などもあるので注意)。現在準備中の地域もあり、今後さらなる広まりが期待される。
倉吉線の廃線印は350円で廃線跡観光案内所と倉吉白壁土蔵群観光案内所の2か所で販売。「日本一美しい廃線跡と称される 旧国鉄倉吉線廃線跡」の文言とともに、最終運行日に列車に取り付けられた「さようなら倉吉線」のヘッドマークを模したスタンプが押されている。
導入を手掛けた倉吉観光MICE協会の営業マネージャー塩川修さんによれば、これまで倉吉線の廃線跡を訪れた証になるような土産物はなかったといい、鉄道マニアはもちろん、一般の訪問客にも人気を集めそうだ。廃線跡近くには健康に良いラドン温泉の関金温泉もあり、塩川さんは「ぜひ廃線跡を歩いて自然に触れ、温泉に入って、心も体もリフレッシュしてほしい」と呼び掛けている。
廃線跡という不便な地域だからこそ訪問者にとって廃線印は訪問の証としての魅力があり、地域にとっても全国的に展開することでそれぞれの地域をめぐってくれる可能性が高まる。将来的には「廃線印帳」の作成も検討されているといい、今後の展開が楽しみだ。