八頭町出身 「世界一のコメットハンター」 東京都内で舞台上演

本田実さん(写真提供:本田実顕彰会)
世界一の「コメットハンター」本田実さん(写真提供:本田實顕彰会)

鳥取県八東村(現・八頭町)出身の世界的アマチュア天文家、本田実(ほんだみのる)さんを題材とした舞台が東京都内で上演される。題名は「星を追う人 コメットハンター」だ。8月28日から9月1日まで、豊島区の「シアターグリーン」で上演される。東京都板橋区を拠点に活動する「劇団銅鑼(どら)」が公演を行う。

本田実さんは1913年生まれ。アマチュア天文家として、生涯に彗星(すいせい)12個、新星11個を発見している。彗星12個の発見は当時の世界記録だったことなどから、世界一の「コメットハンター」と呼ばれている。

本田さんは子どものころ小遣いを貯めてレンズを買い、手作りの望遠鏡を作ったほどの天文少年だった。第二次世界大戦で兵士として南方に出征したときは、戦地で彗星を発見している。イギリス軍が残していったレンズを使って手製の望遠鏡を作り観測を行った。戦地での彗星探索や発見については「科学する兵隊 本田上等兵」などの見出しで新聞各社に報じられている。

本田実さんが子どもの頃に買ったレンズ(倉敷天文台所蔵)

「星を追う人 コメットハンター」は、鳥取市内の介護施設が舞台となっている。介護施設で働く主人公は高校生の時、天文部に所属していた。最近は生活に追われ、星を見ることがなくなっていた。主人公が介護施設で、老人から本田実さんのことを聞いたことから物語が展開していく。現代と過去が交錯する内容となっている。

劇団銅鑼は1972年に設立された劇団だ。2023年に死去した俳優の鈴木瑞穂(すずきみずほ)さんなどが創立に関わっている。これまで日本国内だけではなく、アメリカ・ルーマニア・中国など海外でも公演を行っている。多くのユダヤ人を第二次世界大戦中に救った外交官、杉原千畝(すぎはらちうね)を、いち早く舞台化するなどしている。

同劇団は「平和」「人間愛」「本当に人間らしく生きることとは何か」をテーマに創造活動を続けてきた。世の中には光と陰がある。世の中に知られていない「陰」の部分に焦点を当て続けてきた劇団だ。「見えない彗星を探し続ける本田さんの姿勢が、社会の陰に隠れている人たちに焦点を当てる自分たちと重なった」と、制作を担当する平野真弓さんは語る。

劇団銅鑼の団員たち

平野さんは書籍で本田さんのことを知った。「本田さんに出会って、私たちは見えないものを見落としているのではないかという思いにかられた」と話す平野さん。「星を追う人 コメットハンター」の制作にあたり、本田さんが長年勤務した岡山県の倉敷天文台を取材のために訪れている。

本田さんは大昔の歴史上の人物ではなくて身近な人だ。「これほど1つのことに情熱をかけた人がいたことを知ってほしい」と平野さんは公演に向けて意気込みを語る。

鳥取県八頭町には本田さんの功績を顕彰する「本田實顕彰会」がある。事務局長の山脇京(やまわきみやこ)さんは舞台上演について「驚きと嬉しさが一度にきた」と話す。

本田さんは星が好きな気持ちを胸に、今できることを積み重ねながら夢を形にすべく人生を切り開いていった。「このような本田さんの力強さが少しでも皆さんの心に響いたらうれしい」と山脇さん。

本田さんは、1453回目の観測を行った直後の1990年8月26日に死去している。劇団銅鑼は、その8月26日に劇場入りする。

(※ 本田さんの正式な氏名表記は「本田實」です。本人を含めて「本田実」と表記することが多かったことから、本記事では「実」の表記を使用しています。文中に登場する顕彰会の正式名称は「本田實顕彰会」です。顕彰会の表記では「實」を使用しています。)

「星を追う人 コメットハンター」稽古の様子
「星を追う人 コメットハンター」稽古の様子