
広島市西区天満町に「出雲そば いいづか」がある。口コミによると高評価が多い。
「出雲そば」は島根県の名物だ。実際に行ってみることにした。店は路面電車の通り沿いにあった。
昼12時前に入ったが、すでに満席に近い。カウンターは6席ある。テーブルは15人ほど座れるだろうか。木製のテーブルと椅子で古民家風の店内だ。歴史風情を感じる。
入口には広島カープのマットがある。壁には「創業百六年」という表示が見える。今年が創業百六年なのだろうか。
若い女性スタッフが厨房前のカウンター席を促した。
年配の女性がやさしく言った。
「どっちでもいいよ。好きなほうにかけてね」
若いスタッフは研修中なのか、先輩スタッフに時折、質問しながら仕事をしている様子だ。やさしい声をかけてくれた女性は、店主なのだろうか。厨房の仕事をしながら、フロアのほうにも目配りが行き届いている。
店内の真ん中にあるテーブルは大きくて、10人ぐらい座れる。相席で使う仕様のようだ。


「割子そば(三枚)」と「おひとり様限定 野菜の天ぷら」を注文した。
最初から「そば湯」がついてくる。
「そば湯って、おかわりできるんですか?」
「もちろん、しっかりおかわりして帰ってくださいね」
「そば湯」は、そばを食べ終わってから飲むのではなく、食べながらお茶代わりに飲むのがお勧めらしい。
客が多くて、かなり忙しそうな店内だ。食器の洗いはテキパキとやりながら、キツい言い方にならないように意識して柔らかい話し方を心がけている。
他の客が注文したものが、時間のかかるものだった。
「少しお時間かかります。大丈夫?」
この「大丈夫?」が、あるのとないのとでは印象が大きく違う。
「そば湯、おかわりどうですか?」と聞いてきた。
さっき、おかわりできるかどうか聞いたので、気を使ったのだろう。
新人と思われるスタッフが、なにげなくメニューの上に「てんぷら」を置いた。
「てんぷらをメニューの上に置かないでね」
スタッフを注意するときも、やわらかい言い方で客に不快感を与えないように意識している。

「てんぷら」を「つゆ」につけようとした時、手が滑って「つゆ」がひどく跳ねた。
思わず、「ワッ!」と叫んでしまった。
「どうされました??」
3人同時に、心配そうに聞いてきた。1人は「大丈夫?」と、すぐに駆け寄ってきた。1人は急いで「おしぼり」を出す。
店主と思われる女性は、厨房の中から「私が拭いてあげるわけにいかないしねー」と冗談だ。
こちらも思わず笑ってしまい、場がなごむ。
「拭いてもらいますかー」
こっちも冗談で返す。
温かい「そば」も食べてみようと思い「山菜やまかけそば」を注文した。
「玉子あるけど大丈夫?」
玉子は載せない選択も可能のようだ。
「玉子を載せても載せなくても値段は、いっしょよ」
あきらかに冗談っぽくいうので、ついつい笑ってしまう。
新たに「山菜やまかけそば」を注文したためか、食べかけだった「天ぷら」の「つゆ」が下げられていた。
「あら下げちゃったんだね」
すぐに出してくれた。「つゆ」を出す時「お箸はある?」と満面の笑みだ。満面の笑みで言われるので不愉快な気持ちにならない。
温かい「そば」は、「かけそば」より「釜揚げ」がお勧めだという。次回は「釜揚げ」を注文しようと思いながら、満足のうちに店を出た。
※ この記事は、素性を明かさずに客として来店し、代金をお支払いした上で書いています。
