
<災害時 口腔ケアの方法>
こんにちは。福岡県太宰府市の歯科医、太田秀人です。
前回は、「災害時 避難袋に歯ブラシを」と題したお話しをしました。災害時にも命を守る、お口の情報でした。
前回のお話しはこちらをご覧ください。
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【連載】歯科医「太田秀人」 太宰府から口福(こうふく)を届けます① ~避難袋に歯ブラシを~
私たち歯科医療関係者は、「直接死」の場面では、目の前の命を救うことはできません。
「直接死」は、災害時に崩れた家屋の下敷きになって死ぬような場合です。
でも、「関連死」については救うことができると思っています。「関連死」は「直接死」を逃れた方々が、避難生活などで陥る死のことです。
さて、前回に続いてクイズです。
災害時に「水」は貴重品ですが、コロナ禍を経験して「うがい」「手洗い」「アルコール消毒」は常識となりました。では、「歯磨き後のうがい」に最低限必要な量は、どれくらいでしょうか?
①コップ1杯 ②ペットボトルのキャップ1杯
答えは「②」です。
「5ミリリットルぐらいでも、数回行えば、十分効果がある」と言われています。コップ1杯は200ミリリットルぐらいですから、5ミリリットルで済むなら、ずいぶん節約できますね。

【被災地の歯科衛生士撮影】

【太田秀人さん撮影】

【太田秀人さん撮影】
では、水が少ない時の歯みがきは、どうすればいいのでしょうか?
最低限、約30ミリリットルの水を用意して、歯ブラシを濡らしてから歯をみがいてください。コップに1センチメートル弱ぐらいの水です。歯ブラシの汚れはティッシュで拭いて汚れを取り除き、口の中は2~3回に分けてすすげば大丈夫です。
もし、歯ブラシが無い時は、どうすればいいのでしょうか?
食後や寝る前に、水やお茶で「うがい」をしてください。ハンカチやガーゼなどを指に巻いて「歯を拭く」だけでも十分です。食べ物をよく噛み、舌で歯の表面を擦って掃除するのも効果的です。
もし、歯ブラシが無く、水やお茶も無い時はどうすればいいのでしょうか?
この場合、お口の汚れは、ウェットティッシュや濡れたハンカチなどで拭って掃除することをお勧めします。
この他に水を使わない口腔ケア製品としては、デンタルリンスやウェットティッシュが役に立ちます。避難袋には常備することをお勧めします。
また、「唾液を出す」ことも大切です。皆さんご存知の通り、よく噛んで食べると唾液が出ます。唾液を出すには、あごの付け根をマッサージするのも効果的です。
さらに災害時にこそ、ぜひやってみて欲しい「お口の体操」があります。これは唾液が出るだけでなく、災害時の避難生活を少しでも快適に過ごせて、命を守ることができるお口の体操です。
次回は「命を守る、お口の体操」について、詳しくお話しします。
【歯科医 太田秀人】

○ 太田秀人 ○
1987年、鳥取県立鳥取西高校卒業。長崎大学歯学部卒業後、2009年に福岡県太宰府市で「おおた歯科クリニック」を開業。2011年の東日本大震災・2016年の熊本地震・2017年の九州北部豪雨などで歯科支援活動を行う。その経験をもとに各地で研修会、講演等を行っている。
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