
オーストラリア時間の2025年8月28日、オーストラリア在住の日本人に対して注意喚起のメールが届いた。島根県出身でオーストラリア在住のマラー詩乃(しの)さんによると、オーストラリアに来てから初めて見る内容だという。
現地時間の2025年8月31日、ブリスベン市内で「反移民」をテーマにした抗議行動が予定されていた。在ブリスベン日本国総領事館は、このメールで注意喚起を行った。
マラーさんは話す。
「オーストラリアでデモ自体はよく行われるが、『反移民』をテーマにした抗議活動は初めて聞いた」
現地時間の2025年8月24日には「パレスチナを自由に!」というデモが行われていた。
オーストラリアでは住宅費が値上がりしている。コロナ禍で特に値が上がりし、10年前の2倍になっている。労働者の給料はそれほど上がっていないため、家が買えない人が増えている。
オーストラリアは公的住居が少ないと聞きく。需要に対して供給が追いつかないため、移民のせいで家が買えなくなったと考えている人も多いという。つまり、移民に仕事を取られたと感じているわけだ。
「移民政策をどんどん進めている」とオーストラリア政府を批判する人もいる。批判をかわすためか、政府はビザの条件を厳しくしたり、申請費用を上げたりしているようだ。
移民に対して「自分たちの仕事が取られる」という思いは、昔から白人コミュニティの中にあった。近年それがエスカレートしていると感じる人もいる。
在ブリスベン日本国総領事館から注意喚起のメールが届いた直後、マラーさんは以下のように話していた。
「私は住んでいて怖い目にあったことは無いです。たまたま住んでいるエリアが、比較的教養の高い、左派のオーストラリア人が多い場所だからだとは思います。日本人の移民はそれほど脅威には感じられていないと思いますよ」

「反移民デモ」が行われた後、マラーさんに様子を聞くと以下のように答えてくれた。
反移民デモが行われた8月31日、現地の報道機関は熱心に報道していました。当日、私が一緒に過ごした友達の奥様は、南米にバックグラウンドのあるオーストラリア人です。ご自身もチリ人としてお話されます。
周りを見ても、自分のバックグラウンドはオーストラリアではない、という方が多いです。子供が通う音楽教室の先生は、ロシアや東欧出身です。子供のクラスメイトの中にも、ドイツや中国、インド、スリランカなどからの移民がいて、挙げるときりがないですね。
反移民デモは、大きな事件(イベント)として報道されました。その前の日曜日に行われた「パレスチナを自由に!」のデモと比べると、参加した市民の数は少ないです。市民の関心は移民問題より、ガザ地区のことに集まっています。
反移民デモの報道で一番集中していたのが、オーストラリアにおけるネオナチの台頭だと思います。そういった白人至上主義者と、移民政策の見直しを主張する人たちとが一緒にデモをしたようです。
移民政策の見直しや制限については、長年に渡って議論があります。今回デモに参加しなかった多くの市民も、移民政策の見直しや制限について支持しているようです。
今は住宅に関して、都市部の需要に供給が追いついておらず、住宅費が高騰しています。高いローンを払わないといけない、ローンが始められない…そんな状況です。
移民を受け入れて人口が増えると、住宅の需要が上がる一因となります。このため、もともとオーストラリアに住んでいた人々たちからは移民政策について考え直すべきという声があがっています。それは人種差別の考えと結びつきやすいとは思います。
反移民デモが行われるので、その日は会場に近づかないようにと領事館からメールがあったのは初めてのことだったので、驚きました。実際に半年近く生活している中で、まだ私は人種差別の経験を受けていません。
オーストラリアを知る日本の友人が、報道を見て、心配して声をかけてくれましたが、変わらない生活をしています。
最近知り合った、アデレード在住の30代日本人女性は、ブリスベン周辺に引っ越したいと言っていました。アデレードでは、移民ヘイトを強く感じるそうです。オーストラリア国内でも、事情は色々と違っているようです。
以上、島根県出身のマラー詩乃さんにお聞きしました。