
(前編より づづく)
「グラウンドゴルフ」は、1982年に鳥取県泊村(現在の湯梨浜町)で発祥した。スペイン在住の日本人、メンサヘーラ・パロミータさんは、スペインでグラウンドゴルフの普及を行ってきた。ゴルフの見本市で「グラウンドゴルフ」を紹介して、少しだけ注目されるようになる。しかしスペインでは用具を手に入れるのが困難だったため、なかなか普及は進まなかった。
パロミータさんが、あきらめずに方法を考えていると協力者が現れる。
日本の湯梨浜町役場が中古品を寄付してくれることになったのだ。日本のクラブチームは、スペイン遠征の時に少しずつ用具を運んでくれた。多くの人のボランティア精神により、用具が少しずつ増えていった。
用具が普及するにつれて、グラウンドゴルフが徐々にスペイン国内に広まっていく。
それでも、スペインではグラウンドゴルフがスポーツとして認められない。パロミータさんによると、ヨーロッパではオリンピック種目でないとスポーツとして認められない風潮があるという。
普及するには行政の許可が必要だった。
2023年12月、スペインの内務省に普及の許可を受けるための申請を行った。申請を出しても短期間で活動をやめてしまう人がいるため、簡単に許可は降りない。
パロミータさんは、スペインでの普及活動を長年に渡り行ってきた。この活動に出版界が注目した。パロミータさんの半生をつづった伝記が、スペイン国内で出版されることになったのだ。
伝記の出版がきっかけとなって2024年1月、内務省から普及の許可を取りつけることに成功した。用具の購入にも行政の予算がつくようになった。努力の甲斐があって、最近では競技人口が約1,000人まで増えている。

(芝生の上に立っている赤い帽子の人がパロミータさん)写真提供:パロミータさん
スペインでの普及活動と並行して、パロミータさんはポーランドやハンガリーと共に「ヨーロッパ・グラウンド・ゴルフ協会」を設立した。ヨーロッパには、他にも独自でグラウンドゴルフをやっている国がある。チェコやイギリス、ドイツ、スウェーデンなどだ。これらの国々にも協会への参加を呼び掛けている。
2025年11月にはスペインのバレンシアで、グラウンドゴルフの「オープン・ヨーロッパ」が開催される。「ヨーロッパ・グラウンド・ゴルフ協会」が主催する国際大会だ。この時、パロミータさんは正式に同協会の初代会長に就任する。現在「オープン・ヨーロッパ」の開催に向けて、大忙しの日々を送っている。

パロミータさんによると、グラウンドゴルフは「競技してはいけない」のだという。「競う」「争う」という概念がない。勝ち負けではなく、結果を含めた過程を重視するスポーツだからだ。
パロミータさんは言う。
「鳥取県の小さな村で始まったスポーツが世界中に広まり、輪になって、みんなで一緒に楽しくゴルフをしましょう。グラウンドゴルフで世界中が友達になったらケンカも起きない」
夢はグラウンドゴルフで世界平和に貢献することだ。
2027年5月には、日本の関西一円で「ワールドマスターズゲームズ2027関西」が開催される。生涯スポーツの国際総合競技大会だ。世界中から様々な種目の選手が集まる。グラウンドゴルフは鳥取県湯梨浜町が会場となる。
(※ メンサヘーラ・パロミータさんは日本人です。ご本人の希望により日本名は公開していません。スペインでの呼び名「パロミータ」を使って記事を作成しています。また、お顔も伏せて写真を掲載しています)

(中央にいる似顔絵の人がパロミータさん)
=2025年5月、島根県の出雲大社で撮影(写真提供:パロミータさん)

(画像提供:パロミータさん)
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