
2026年8月3日、ベーシストのモリモト・ハヤトさんが東京での初ライブに出演した。モリモトさんは奈良県出身だ。大学の医学部を卒業した異色の経歴を持つ。
特定のバンドには所属せず、ミュージックバーでの演奏や、サポート活動などを中心に行っている。
音楽を始めたのは小学1年生のころだ。趣味でピアノを弾いていた母の影響で、ピアノを習い始めた。
ピアノを続ける一方で、中学時代はサッカーに熱中した。運動は中学3年間で、やり切ったと感じたため、高校では文化部に入ろうと考えた。
選んだのは軽音楽部だった。モリモトさんは、軽音楽部で初めてベースに触れることになる。
目立つ立場よりも、陰で支える「縁の下の力持ち」のような役割が、モリモトさんは好きだった。
ギターやヴォーカルのように前に出るパートより、楽曲全体を陰から支える「ベース」に自然と惹かれた。
子どものころから続けてきたピアノは、それほど真剣に打ち込んだわけではない。ピアノを自分で選んだというよりは、兄や姉がやっていて身近にあった、という感覚だった。
真剣に打ち込まなかったからこそ、次に楽器へ取り組むなら中途半端にはしたくない、という想いがあった。
(ベースは自分で選んだ楽器だ。今度こそ真剣に打ち込もう)
子どものころのモリモトさんは、ユニークな性格だったという。興味を持ったことを深く追求し、納得するまでやり遂げようとするタイプだった。
特に好きだったのは絵を描くことだ。描き始めると、完成するまで何時間でも机に向かった。
キャラクターを模写するだけでなく、複数のキャラクターを組み合わせて1枚の絵に仕上げることもあった。配色にもこだわり、想像を膨らませながら作品をつくっていった。
ベースに真剣に取り組もうと考えた背景には、こうした幼少期からの気質も重なっている。
音楽に熱中しながらも、大学に進学する時点でプロのミュージシャンをめざしていたわけではない。憧れていたのは脳科学者だった。
脳科学者になるためにモリモトさんは、鳥取大学の医学部生命科学科に進学した。医師ではなく、医学や生命科学分野の研究者を育てる学科だ。
大学2年生の授業中、心の中で、ふと違和感を覚えた。
(自分が本当にやりたいことは、これじゃない)
ベースに対して真剣になるにつれ、気がつかないうちに、音楽への想いが研究者へのそれを上回っていたのだ。
在学中からモリモトさんは、プロのミュージシャンとして活動を始めた。卒業後は、就職せずに音楽の道へ進む決断をした。
将来への不安がなかったわけではない。それでも人生は一度きり。ここまでやりたいことに出合えたのなら、納得できるまで挑戦したい。
家族もその選択を応援してくれた。モリモトさんは授業をおろそかにすることなく勉学にも励み、医学部を卒業した。
プロのミュージシャンをめざすにあたって、在学中に偉大なドラマーとの出会いがあった。モリモトさんに大きな影響を与えた偉大なドラマーとは……。
(後編につづく)
