
情報公開請求は、行政機関が保有する「行政文書」などについて、誰でも開示を求めることができる制度だ。行政機関が保有する「個人情報」も開示の対象とすることができる。
行政の透明性確保などを目的として整備されている。この情報公開請求制度において、島根労働局で、手数料の過大請求が繰り返されていた。
令和8年3月5日午後7時ごろ、過大請求を受けた被害者の1人に対して、島根労働局から謝罪と説明が行われた。場所は、鳥取県米子市内だった。
謝罪に訪れたのは島根労働局総務部総務課の課長O氏と、係長のA氏だ(肩書は当時)。
島根労働局は島根県松江市に所在する。O氏とA氏は、松江市から鳥取県米子市を訪問した。謝罪のため、夜間に隣の県まで行政機関の職員が出向くのは、異例のことではなかろうか。
令和8年3月11日には、過大請求となっていた請求を取り消す書面が、被害者あてに送付された。書面には、過大請求で迷惑をかけたことへの「お詫び」も書かれていた。

続けて令和8年3月19日には、厚生労働省の大臣官房地方課、係長Y氏から、電話により被害者へ謝罪があった(肩書は当時)。地方課は、地方の労働局を総合的に監督する厚生労働省の部署だ。
謝罪を受けた被害者は、令和7年8月ごろから島根労働局に対して情報公開請求を行っていた。令和7年12月、被害者のもとには、意味不明な手数料の請求が何通も届いていた。
中には、5件分の手数料を追納するようにとの請求もあった。「文書が存在するのかしないのか明らかにできない」旨の理由で、不開示になった文書についての請求だ。
「行政文書開示請求書」を提出した段階で、被害者は、すでに手数料の納付を終えていた。
にもかかわらず、あるのか無いのか分からない文書に対して「5件」という具体的な件数分の追加納付を求められたのだ。
「文書が存在しなくても、探索を行っただけで手間賃の性質の手数料が発生する」と、職員は主張した。探索を行った以上、払え、払えの一点張りだった。
被害者は納得がいかず、令和8年1月、行政不服審査法に基づく「審査請求」を行った。行政庁の不当な処分などに対して、不服申し立てをすることができる制度が「審査請求」だ。
審査請求の過程で、島根労働局の手数料請求が間違った運用による、不当な過大請求であることが判明した。
これを受けて、被害者に対して、島根労働局や厚生労働省が謝罪を行ったのだ。
情報公開請求の手数料には「開示請求手数料」と「開示実施手数料」がある。「開示実施手数料」は文書の印刷に要する費用や、郵送代などの実費だ。
島根労働局が過大請求を行っていたのは「開示請求手数料」のほうだ。開示請求をした文書の件数に対して定額で徴収される。
国の行政機関では「開示請求手数料」は、原則として文書1件あたり300円だ。しかし、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令」第13条には次のような趣旨の規定がある。
「ひとつの行政文書ファイルにまとめられた複数の文書は、1件の文書とみなす」
「相互に密接に関連する文書は、1件の文書とみなす」
「複数の文書を1件とみなす」場合であっても、全部の文書に対して300円の開示手数料を、島根労働局は課していたのだ。
さらに「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第16条には次の趣旨のことが書かれている。
「手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならない」
「文書の探索を行っただけで手数料が発生する」やり方だと、手数料がいくらになるのか見当もつかない。
高額請求のリスクがあって、開示請求をためらう人が出てくる。国民は情報公開制度を利用しにくくなる。
これは「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第16条の趣旨にも反する。
島根労働局は、これらの法令に反する運用を行い、間違った過大請求をしていたのだ。
他に過大請求の被害者は、いなかったのか? いたとすると何人に対していくらの過大徴収が行われていたのか?
他に過大徴収された者がいなかったとすると、1人に対してだけ、ある日突然、やり方を変えて過大請求を繰り返したことになる。
その場合、かえって悪質性が増す。
過大徴収に心当たりのある人は、島根労働局に問い合わせたほうがよいかもしれない。
(注)全国各地にある労働局は、国の機関です。国の行政機関は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」など、国の法律に基づいて情報公開制度が運用されます。
県や市町村などの地方自治体では、各自治体の条例に基づいて情報公開制度が運用されます。このため自治体ごとに運用のやり方が異なる場合があります。

