
野生動物を、やみくもに保護することだけが正解ではないのか?
大学の先生から、「殺処分」という思いもよらない答えを聞いた。獣医をめざす大学生、田成陽乃(たなり・ひの)さんは、正解が分からなくなった。
自分で判断できるようになるには、知見を広げなくてはならない。
オーストラリアの野生動物について、臨床を専門的に学ぶトレーニングコースの受講生を募集していた。「オーストラリア日本野生動物保護教育財団(以下 教育財団)」のコースだ。
インターンシップとして動物病院での勤務も経験できる。田成さんは日本の大学を休学して、オーストラリアに向かった。
オーストラリアで最初にぶつかったのは、言語の壁だった。
留学に備えて、それなりに英語の勉強は強化していた。しかし田成さんの英語は、まったく通じなかった。
語学学習は、もっと実践的に、継続的にやっておくべきだったと後悔した。自分がやってきたのは、実践の会話を想定した英語ではなかったのだと痛感した。
動物病院でのインターンシップに参加するためには、一定の英語力がなくてはならない。英語力の試験により参加できるかどうかが決まる。
教育財団の支援で、まずは語学学校に通った。
語学学校では「話す」トレーニングを中心に「読む」「書く」「聴く」の強化も行った。授業の合間には、図書館やカフェで問題集を解いたり、授業の復習をしたりした。
学校への行き帰りは、ポッドキャストで英語を聞きながら歩いた。

「読む」「書く」「聴く」「話す」のうち「話す」ことで伸び悩んでいたため、先生に相談した。AIを活用して英会話の練習ができるとアドバイスされた。会話の相手が見つからないときは、AIと会話をすることで練習に励んだ。
英語の勉強がイヤになることもあった。オーストラリアの動物にまつわる記事や、動物病院のSNS投稿を読むと、動物に関連した英単語が出てくる。動物が好きな田成さんにとっては、勉強のつらさを緩和できる工夫だった。
2026年2月1日、語学力の試験日がやってきた。
インターンシップに参加することを第一の目的としてオーストラリアに来た。なんとしても合格しなくてはならない。必死で練習した甲斐があって、現地の人との会話が理解できるようになってきた。
結果は……。
「不合格」
悔しかった。なぜもっと頑張れなかったのだろう。なんのためにオーストラリアに来たのだろう。これまで自分は、時間もお金も無駄にしてきただけだったのではないか。
いろいろな想いが頭を駆け巡った。
あきらめきれない。どうにかして少しでもインターンシップに関われないか。教育財団のスタッフに頼み込んだ。すごく困らせたと思う。
「簡単なことにチャレンジして失敗したわけじゃない。難しいことにチャレンジしてるんだから自信を持って」
田成さんを元気づけたのは、スタッフの励ましだった。
残りの滞在期間、オーストラリアの動物を少しでも多く見ることに力を注ごうと気を取り直した。
語学力の基準を満たすことができなかった。またしても田成さんに新たな壁が立ちふさがったのだ。インターンシップに参加することなくオーストラリアを去ることになるのか。
このあと、田成さんには予想外の展開が待っていた。
(第3話に続く)


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