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  3. 獣医をめざしてオーストラリアへ(前編) 「オーストラリア日本野生動物保護教育財団」で学ぶ田成陽乃さん

獣医をめざしてオーストラリアへ(前編) 「オーストラリア日本野生動物保護教育財団」で学ぶ田成陽乃さん

2026 3/25
国際
2026年3月25日
サン・レターズ・プレス編集
獣医をめざす大学生の田成陽乃さん
獣医をめざす大学生の田成陽乃さん

「ケガをして持ち込まれた野生動物がいる。野生への復帰が難しい。獣(じゅう)医師(いし)のあなたは、どうしますか?」

日本の大学に入ったばかりのころ、授業で先生から問いかけがあった。

ほとんどの生徒は同じように答えた。

「保護をして、動物園などの施設で終生飼育をする」

先生が出した答えは……。

「殺処分」

野生にいた個体が檻(おり)の中で過ごすことは、動物にとって本当に快適なのか。治療費や飼育費用はどこから出るのか。その後も同じようなことが起きたらどうするのか。

1匹の野生動物を救うためだけに、起こりうる問題がたくさんあると教わった。

田成陽乃(たなり・ひの)さんは、自分の中で正解が分からなくなった。

田成さんは獣医をめざす大学生だ。保育園のころ、父が毎週のように動物園へ連れていってくれた。動物は、なんでも好きだった。

小学校の卒業文集には「獣医になりたい」と書いた。図書館にあった動物関係の本は、ほとんど読んだ。

叔母(おば)に見せてもらった野生のコアラの写真が印象に残る。コアラだけでなくオーストラリアにしかいない独自の生態系や固有種に興味を持った。「そこでしか見られない」というのが子供心に魅力的だった。

オーストラリアのコアラ
オーストラリアのコアラ(撮影:田成陽乃さん)

高校卒業後の進路は、獣医学科への進学しか考えられなかった。高校3年生のときは獣医学科に合格できず、浪人を決意した。

浪人はしたものの、ずっと点数が取れず、他の学科を受験することを考えることも多かった。

ダメだ、自分にはできない、能力が足りないと思う瞬間が辛(つら)かった。理想と現実に差があるとき、理想に届かない自分がイヤになる。

考えても考えても、獣医への夢は膨(ふく)らむばかりだ。ほかの動物系学科を候補に入れてみたものの、獣医になれなかった時の自分を想像することができなかった。

結局、獣医学科に絞って受験した。

1年間、苦悩した甲斐があって、獣医学科がある日本の大学へ入学した。

そんな矢先、先生から思いもかけない問いかけと、意外な答えを聞かされたのだ。入学してすぐに、田成さんに新たな壁が立ちふさがった。

動物が好きで、命を助けることが正義だと思ってきた。人間のせいでその存在を絶滅に追いやられている命を救いたい。そんなことを思っていた。

(やみくもに保護することだけが正解ではない?)

先生の出した答えが、田成さんを混乱させた。

迷った末(すえ)に行き着いたのは、正解を知るために知見(ちけん)を広げようということだった。何が正解なのか。それを判断するためには知識と経験が足りない。

田成さんは、専門的に野生動物について学べる場所を探し始めた。

2024年夏、学生向けのオープンチャットを見ていると、ある団体の名前が目に飛び込んできた。

「オーストラリア日本野生動物保護教育財団」

野生動物の保護を目的とした取り組みをオーストラリアで行う財団が、トレーニングコースを開催している。オーストラリアへの留学を支援してくれるという。インターンシップとして動物病院での勤務も経験できる。

オーストラリアの「野生動物保護」に興味があった田成さんは、高校生の時に旅行でオーストラリアを訪れていた。動物園や野生動物を実際に体験して、いっそう興味を持った。ずっと興味はあったが、専門的に学んだり体験したりする機会は持てずにいた。

(チャンスかもしれない)

挑戦してみようと考え、日本の大学を休学した。

さまざまな想いを胸に2025年11月、田成さんはオーストラリアに向かった。

オーストラリアで田成さんは、何を学ぶことになるのか。

(後編につづく)

オーストラリアの動物病院には、野生のカンガルーが持ち込まれることもある
オーストラリアの動物病院には、野生のカンガルーが持ち込まれることもある(撮影:田成陽乃さん)

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