
(搭乗体験記⑤より つづく)
米子鬼太郎空港(以下 米子空港)の外貨自動両替機が受けつけない「香港ドル紙幣」があった。郵送により両替するしかないのだろうかと思いつつ後日、改めて米子空港を訪れた。自動両替機で両替できないか、もう1度試してみようと思ったからだ。
行ってみると、自動両替機には「利用停止中」の貼り紙がある。故障のため使えない。
自動両替機の前に白いカゴのようなものがある。自動両替機で対応している金種と、非対応の金種を説明するパンフレットが入れてある。
パンフレットを取り出そうとカゴの中を覗くと、何やら紙幣のようなものが見えた。中国の100元紙幣であった。誰かが両替しようとしたとき財布から偶然カゴの中に落ちたのか、それとも両替できず扱いに困って、わざと置いていったのか。

いずれにしても、拾ったお金なので警察に届けなくてはならない。米子空港のすぐ前に派出所がある。派出所へ持っていったところ、意外な反応が返ってきた。
米子空港の中で拾ったものは警察では受け取れない。派出所の警察官によると空港に落ちていたものは、空港に届けなくてはならないようだ。まずは拾った者が空港に届ける。そのうえで警察に届けるかどうかは空港側が判断するものだという。
空港の判断に委ねるということは、仮に空港が警察に届けなかった場合どうなるのだろうか。それも空港側の判断であって警察では、どうこう言えるものではないとのこと。釈然としない説明が続く。
「一緒に行きましょう」
警察官が、自ら空港の案内所へ同行すると申し出た。
警察官が案内所の職員に事情を説明した。徒歩で約30秒の場所に派出所がある。それなのに、派出所ではなくて空港で拾得物を受けつける。案内所の職員も、その意味が分かっていないようだった。

案内所職員は内線電話で上司と思われる職員に確認を行った。
数か月経っても落とし主が現れない場合、本来なら届けた人には拾得物をもらう権利が発生する。少額なので案内所に渡して、すぐに帰ってもよかった。しかし、空港で拾ったお金は派出所では受け取れないということは初めて知った。珍しい経験なので、成り行きを最後まで確認することとした。
待つこと約20分、案内所職員の上司と思われる人がやってきた。上司は次のような趣旨の説明をした。
落とし主が現れなかったとしても、届けた人に拾得物を渡すことはできない。空港の規定でそうなっている。空港が警察に届けた後は警察で保管されるだけだという。
案内所に同行した警察官によると、届けた人に渡すか渡さないかも「空港の判断」だ。
米子空港としては届けた人に渡さないという規定になっている。このため、名前や連絡先などを聞かれることもなかった。誰が届けに来たのか、記録も残らないことになる。
近隣の空港では、どうなっているのか電話で聞いてみた。
島根県東部にある「出雲縁結び空港」では証書のようなものを書くことで、拾得者は権利を主張できるのだという。鳥取県東部にある「鳥取砂丘コナン空港」でも同様の回答であった。島根県西部にある「萩・石見空港」でも同じであった。
どうやら、米子空港だけが特異な対応なのかもしれない。
今回、最初は空港近くの派出所に持っていった。そして、警察官から空港側に届けるように指示された。もし空港近くの派出所ではなく、米子市内まで行った後で米子警察署に届けたらどうなっていたのか。もう1度、空港に帰って空港案内所に届け直すように指示されたのだろうか。
空港派出所の警察官は断定的な説明を避けた。このケースついては米子空港の職員も、よくわからないと言っていた。
※ この記事は取材日時点の情報をもとに書かれた体験記です。
(全6回に渡って連載してきました「グレーターベイ航空米子香港便 搭乗体験記」は、今回で終了となります。お読みいただき、ありがとうございました)
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